どちらも仕事上でのレター、通信文、添え状などで使われる言葉ですが「ご笑納」は聞いたことがないという方もおられるかもしれませんね。「ご笑納」は仕事、ビジネスの現場だけでなく、大人社会での少しフォーマルな関係で円滑な、少しウィットの効いた表現としても使われます。
業務上のやり取りで受け取ってほしいものを送る時「ご査収」を使う
使い方としては
「ご査収ください」
「ご査収のほど、よろしくお願い致します」
などと使うのが通例です。例えば
「見積書を同封いたしましたので、ご査収の程、何卒宜しくお願い致します。」
といった感じです。
どういった場面で使うかというと請求書、見積書など「相手から求められて発行(発送)する場合」「発行(発送)することが義務付けられているものを発送する場合」です。
ですから、受け取る側は受け取ったものを必ず「確認」する必要があります。
送る側からすれば、相手に必ず確認してもらうために何にでも「ご査収」を使えるわけではありません。あくまで相手の要望に基づいて送るもの、また、送らなければいけないものであるから相手は必ず「確認」するわけです。
「ご笑納」はこちらの都合で送る時のへりくだった言い方
反対に「ご笑納」は相手に求められもしていないもの、送る義務もないものを送るときに使います。「つまらない物ですが」という言い方にも似ています。「つまらない物ですが」というときは普通は贈答品ですが「ご笑納」はもっと幅広いものに使います。
例えば情報提供を目的とした冊子、文書ファイルデータなども含みます。ビジネスや仕事の現場ではむしろこちらの使い方の方が多いのではないでしょうか?
「ご笑納いただければ幸いです」
「ご笑納ください」
などと使います。
例えば、求められたものではないが参考にしてほしいものを送る時に使います。が、あくまで、送るものが相手が喜ぶものでないといけません。
例えば
カタログを請求されたのでカタログを送付する際に、会社報を同封して送る。
取引先に対して、現在やり取りしている業務上の要件とは直接は関係しないが、相手がテリトリーとしている分野・テーマに参考になる情報を提供する。
旅行のお土産のお菓子を送る。
などです。
求められて送るのではないので、何かのついでにおくることが多いのではないでしょうか?
関係が近くなればそのこと単独でやり取りができるでしょうが、関係ができたばかりで関係性が乏しい場合は単独で送ることはやりづらいからです。一方的に関係を近づけることは嫌がられることは多いでしょう。
「ご笑納」は使える場面は限定的である。
では関係性が近くなると、わざわざ「ご笑納」というかしこまった言い方をしなくてもいいような気がします。
例えば「よろしければ参考にしてください」「お役に立てれば幸いです」など。「つまらないものですが」も当然使います。
ですから、「ご笑納」は使う機会が少ないのかもしれません。関係性が近くなっても礼儀がしっかり求められる間柄―例えば顧客など―で使うことになるでしょう。いずれにしても一方的な気持ちで送るものにつかうものではないと考えられるでしょう。
説明しにくいのですが、相手が喜んでくれる、ここちよく受け取ってくれるという確信があって、結果そうならないと成り立たない言葉の使い方です。相手が喜んでくれると確信していても、相手が喜んでくれなければ「笑納したこと」にならず、迷惑や手間をおかけしただけになってしまうからです。
上下関係がしっかりあるときに、目上の人のはあまり使わないかもしれません。というのは目上の人に求められてもないものを送ること自体が失礼に当たると考えられます。「ご笑納ください」とへりくだったとしても、むつかしい参考文書などを送ってしまうと「マウントを取ろうとしている」などと勘違いされてしまうかもしれません。
「ご笑納」を使う場面、使わない場面を考察してみる
相手との関係で送るものに関してハンドリングをとろうとすることを意味するだろうからです。ましてや押しつけにならないようにしましょう。目上の人に頼まれてもない、しかし、喜んだり気持ちよく受け取ってもらえるものがあるというときは、送る前に一言、断りの連絡「送ってもよろしいでしょうか」などがあったほうがいいかもしれません。
しかし、お中元など、慣例的に送ることが認められているものはそうとも限りませんが。とはいえ、迷惑にはならないようにしなければいけないでしょう。
しかし、こんな時は喜ばれるかもしれません。
顧客に対して、趣味、し好に基づいた情報や物を提供、紹介する場合。
顧客の職務に関係する情報や物を提供、紹介する場合。
などです。
しかし、関係が一定できてからにしましょう。相手からして関係性が離れているのに趣味に関するものを送られるというのは「接近しすぎ」と受け止められかねません。
慣れると割と使いやすい。距離感を縮める。
これらの距離感の微妙な間柄を築けば、割と使いやすい、さらに距離を縮めることのできる便利な言葉でもああります。
趣味の世界などでも使えそうです。例えば通っている趣味の教室の先生へPCの使い方がわかる資料を送ったりする場合です(相手が求めていればの話です)。とはいえ便利だと思い、多用すると意図しない受け止めかたがされるわけではないので、気をつけましょう。
粋なこころづかいといった使い方はいいかもしれません。長期的、安定的な関係性の中で使うといいことばともいえるでしょう。